職場の飲酒運転対策メルマガ      バックナンバー

ASK飲酒運転対策特別委員会が無料配信している「職場の飲酒運転対策メルマガ」のバックナンバーです。

74号2012

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     【職場の飲酒運転対策メルマガ】  
                  74号 12.7.10
                   ASK飲酒運転対策特別委員会
                   http://www.ask.or.jp/
    ___________________________☆
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 飲酒運転防止への社会的意識の高まりを受けて、運輸業界をはじめ、
 さまざまな職場で、今、積極的な取組みが模索されています。
 このメルマガでは、ヒントになる事柄、役に立つ情報をお伝えして
 いきたいと思っています。

=================== このメールマガジンは ====================
 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)内に
 設置された飲酒運転対策特別委員会が、情報提供のために発行する
 ものです。
 ASKのホームページ http://www.ask.or.jp/ からご登録いただいた
 方に、月1回、無料で配信します。
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━━━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    1.インストラクター養成講座NOW!
    2.ASKからのお知らせ
    3.ニュースCLIP!
    4.山さんコラム No.72
    5.ASKの活動ご紹介
    6.編集後記 *つぶやき*

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 「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」
    
       ――車両には、「自転車」も含まれます!

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  1.インストラクター養成講座NOW!
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 ★第5期飲酒運転防止インストラクター養成講座

 あと数名で申し込み締切りです。
   ↓   ↓   ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_instructor.html

 【ステップ1】の通信スクール(添削3回)をすでに45名の方が修了。
 締め切りは9月末です。(間際は混み合いますので、早めに提出を)
 
 通信スクールの内容はこちら
  ↓   ↓   ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_inst_tsushinschool.html

 【ステップ2】
 9月から12月にかけて、全国12ヵ所でスクーリングを行ないます。 
 7月中には、受講者の皆様に、案内を郵送します。
 スクーリングに出席しないと、インストラクターとして認定できませんので、
 必ずご参加ください。

 【認定インストラクター向けスキルアップ研修】 
 スクーリングに併せて、全国11ヵ所で、認定インストラクター向けのスキル
 アップ研修を実施します。
 1期~4期の認定インストラクターには、7月中にご案内をお送りします。 
 新たな情報を得たり、インストラクター同士の交流の場にもなりますので
 奮ってご参加ください。


 ★上級インストラクター2人が地元紙に紹介

  広島の自動車学校指導員の池田貴史さんと前迫公則さんが中国新聞に
  紹介されました。以下のサイトで読めます。

 ◎飲酒運転の危険性プロが啓発(6月26日 中国新聞)
 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201206260166.html

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  2.ASKからのお知らせ
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 ★フジテレビ「めちゃイケ酒豪No.1は誰だ!決定戦」

 フジテレビの人気バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ」で、6月9日に
 「めちゃイケ酒豪No.1は誰だ! 決定戦」が放送されました。

 番組の新メンバーと旧メンバーとの間に「溝ができている」ため「飲まないと
 仲よくなれない」という設定で、午後6時半から翌朝4時まで、合同飲み会を
 行なうというものです。全員起立し、歌って踊って杯をあける「テキーラ
 タイム」などの趣向も入れ、早朝まで10時間近く飲み続けます。

 急性アルコール中毒になってもおかしくないほど大量に飲んだメンバーも。
 1日経っても、もし運転したら飲酒運転になるほどの量です。

 お笑い番組とはいえあまりにも目に余るため、フジテレビに抗議したところ、
 取締役ら4人が訪れ、「配慮が足りなかった」と次の対応を約束。

 ●バラエティ制作センターで全30番組のプロデューサーとディレクター80人を
  集めて勉強会をし、お酒を扱う場合の注意点とアルハラについて情報を共有

 ●番組のホームページに今回の経緯とアルハラなどについてメッセージを掲載

 ……番組製作者のアルコールへの意識が変わることを願っています。
 


 ★職場の飲酒運転防止対策、啓発キャンペーンにどうぞ。

 ●トイレットペーパー「飲酒運転防止(7つの落とし穴)」
 http://goo.gl/LhpCS

 ●DVD&ハンドブック
 「知って得する!アルコールの基礎知識」
 http://www.ask.or.jp/ddd_dvd.html#book

 ●体質ごとの飲酒リスクがわかる!
 ASKアルコール体質判定セット「かんたんジェルパッチ」
 http://www.a-h-c.jp/tool_taihan.html

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  3.ニュースCLIP!
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 梅雨から夏本番へ。暑さがこたえる今日このごろ。

 酩酊した親が乳幼児を巻き込んだ痛ましい事故が、札幌で起きました。
 東京では、乳児を連れた女性巡査部長が酒酔い運転……。

 子どもを守る親が子どもを危険にさらしてしまうということに、
 アルコールの酔いの狂気を思い知らされた出来事です。

 今成が担当しています。
 お時間の許すかぎり、おつきあいください。

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 1)父親が子どもを乗せて電柱に激突
 2)熊本県で悪質な飲酒運転が頻発
 3)警察官の飲酒運転がどうにも止まらない
 4)福岡県の条例、施行規則案を発表
 5)酒類提供と同乗者への罰
 6)自転車の酒酔い運転、取り締まりを強化

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 1)父親が子どもを乗せて電柱に激突

 26歳の父親が運転する車がカーブを曲がりきれずに歩道の電柱に激突して
 横転、同乗の1歳児が車外に投げ出されて死亡、本人と4歳児も負傷する事故
 が起きました。

 ◎運転の父親は夫婦げんか後、飲酒運転か(6月25日 北海道文化放送)
 ◎父親を危険運転致死傷容疑で再逮捕へ(7月8日 読売新聞)

 事故が起きたのは6月24日夜、札幌です。
 「夫は、バーベキューで飲酒した。その後、知人の家でも酒を飲んだ」と妻
 は語っています。

 一家4人は、午後2時頃から、友人らと公園でバーベキュー。場所を友人宅に
 移して午後10時頃まで、夫はビールを計10缶以上飲み続けたといいます。
 帰宅の際には、飲酒していない妻が車を運転していましたが、夫が車内で暴
 れ出したため、妻は路上に車を停車させ、助けを求めるために車外に出た
 すきに、夫が運転を始めてしまったというのです。
 あろうことか、夫は飲酒運転のうえに、無免許でした(速度違反などを繰り
 返し、前月、免許取消)。

 夫の血液からは、呼気換算で酒気帯び運転基準値の約10倍に当たるアルコール
 が検出。現場に残ったタイヤ痕などから、制限速度40キロの市道を時速100
 キロ以上で走行していた可能性が高く、緩いカーブを曲がりきれずに反対
 車線にはみ出したとみられます。
 こうした状況から、札幌東署は危険運転致死傷罪の適用要件となる「アルコ
 ールなどの影響で正常な運転が困難な状態」だったと判断、再逮捕する方針
 を固めました。


 2)熊本県で悪質な飲酒運転が頻発

 6月12日の時点で、こんな報道がありました。

 ◎絶えぬ飲酒運転、今月既に逮捕者10人(6月13日 熊本日日新聞)

 熊本県警によると、逮捕された10人中8人が呼気濃度0.50mg/l以上で、8人
 は追突や自損事故を起こしたとのこと。
 そのうちの2例を見てみると――

 ●警部補(55)(6月22日 毎日新聞)
 6月3日午前8時5分頃、出勤中に追突事故を起こし呼気0.63mg/lのアルコール
 を検知。休みだった前日午後から翌朝まで、自宅でワイン1.8リットルと
 市販の缶入りカクテル1本を飲んでいた。

 ●小学校教諭(55)(6月27日 毎日新聞)
 6月9日、部活動の練習試合に顧問として児童を引率。試合後の午後3~6時、
 児童や保護者と焼き肉店で飲食した際にビール中ジョッキを5杯、焼酎の
 水割りを5杯飲んだ。いったん代行運転で両親の家に戻ったが、約20分後に
 1人で飲み直すため車を運転し軽乗用車に追突。呼気0.55mg/lのアルコール
 が検知。「当時、外はまだ明るかったので飲みたかった。個人的な悩みもあ
 った」と述べている。

 どちらも大量飲酒で、アルコール依存症の疑いがあります。
 その後も、熊本での飲酒事故は止まりません。次の2例はどちらも、朝。
 33歳の無職男性はアルコール依存症の疑いが濃厚です。

 ●無職男性(33)(6月26日 西日本新聞/7月7日 毎日新聞)
 6月26日早朝、自転車で通学途中の高校生をはねて死亡させた。呼気0.54mg/l
 のアルコールを検出。「午前0時過ぎから6時まで自宅で500ml入り缶酎ハイ
 4本を飲み、近くのコンビニに朝食を買いに行く途中はねた」と話している。
 その後の調べで、男性は常に酒を飲んでいる状態で生活していたことがわか
 り、日常的に飲酒運転をしていた疑いがもたれている。

 ●熊本市職員(45)(7月7日 読売新聞)
 7月7日午前9時頃、信号待ちをしていた車に追突。自宅から出勤途中で「前
 夜に繁華街でワインやビールなどを飲み、代行運転で家に帰って、市役所に
 出勤する途中だった」と供述している。

 飲酒運転の6割以上が多量飲酒者、4割が依存症の疑いといわれています。
 県職員・市職員へのアルコール教育と依存症対策が急務です。

 ★DVD&ハンドブック
 「知って得する!アルコールの基礎知識」
  ↓ ↓ ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_dvd.html#book

 ★第5期飲酒運転防止インストラクター養成講座
   ↓   ↓   ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_instructor.html


 3)警察官の飲酒運転がどうにも止まらない

 育休中の女性巡査長が0歳の子どもを乗せて酒酔い運転、という衝撃的な
 ケースもありました。
 ここでも、依存症の疑いが濃厚なケースが多くみられます。
 多量に飲酒する習慣の見直しと、依存症対策が急務です。

 ●岡山県・巡査部長(59)(7月1日 山陽新聞)
 6月14日午後3時35分頃、軽乗用車を運転していたときに故障し停車。住民
 の通報で署員が駆け付けたところ、問い掛けに応じられないほど酔っていた。
 巡査部長は交番勤務でこの日は非番。昼頃、自宅で焼酎をロックで4、5杯
 飲んで2時間ほど昼寝。目覚めた際、午後2時45分を指していた腕時計を
 「午前9時15分」と逆さまに読み取ったため、翌朝と勘違いして飲酒運転の
 まま“出勤”。同僚から休みだと指摘され帰宅しようとして飲酒運転発覚。

 ●鹿児島県・警部補(48)(7月6日 共同通信)
 6月26日午前1時50分頃、自宅から約300m離れた公園のフェンスを突き
 破る事故を起こし、付近の住民が通報した。呼気0.3mg/lのアルコールが検出。
 駆けつけた署員が酒の臭いを感じるほどで、「気づいたときには衝突して
 いた」と話している。
 警部補は前夜、居酒屋などで同僚ら計12人と、ビールジョッキ5杯と焼酎
 お湯割り5杯を飲んで帰宅後、車でレンタルビデオ店に行った帰りだった。
 「事故後そのまま逃げようとしたが、車が故障して動かなかった」と供述。
 その後の調べで、6月上旬にも同僚の警察官と飲酒して帰宅した後、同じ
 ビデオ店まで車を運転するなど、常習だったことがわかった。
 警部補は交通課で課長代理として、小中学生や高齢者らを対象とした飲酒
 運転撲滅や交通法規順守の啓発活動などを担当。今月上旬にも、管内の各
 職場の安全運転管理者ら約50人にルール順守を呼びかけたばかりだった。
 
 ●石川県・巡査部長(51)(6月29日 産経新聞)
 6月28日後11時25分頃、駐在所から約200m離れた集積所にごみを出しに
 行った帰りに、付近に駐車していた車2台に衝突、自ら署に通報した。
 巡査部長は、休日だったこの日、「駐在所で夜9~11時頃、1人でビール大瓶
 1本と缶ビール1本を飲んだ」と供述している。

 ●東京都・女性巡査長(32)(7月8日 FNN)
 7月7日午後6時半過ぎ、前方を走る車に追突。警察官が飲酒検知を求めたと
 ころ、一緒に乗っていた0歳の子どもを抱いて逃走、すぐに転倒したが、路上
 に子どもを残してさらに逃走し、十数メートル離れた場所で酒酔い運転の
 容疑で逮捕された。午前中から酒を飲んでいたとみられ、0.9mg/lと酒気帯び
 運転の基準の6倍高いアルコール数値が検出。育児休暇中で、「子どもを寝か
 しつけたあと、サワーを数本飲んだ。育児のストレスから、夫に隠れて酒を
 飲むことがある」と供述している。

 ASKでは、警察職員の飲酒運転ニュース(2007~2011)を分析。
 飲んだ翌朝に0.5mg/lを超える呼気濃度が検出されるケースも多く、背景に
 「大量飲酒」があります。
 アルコール依存症の疑いが4割。予備群をあわせると7割にのぼります。
 詳しくは以下をご覧ください。

 *警察職員による飲酒運転 事例の分析(2011年)
  ↓ ↓ ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_case4.html


 4)福岡県の条例、施行規則案を発表

 4月1日に施行された福岡県の飲酒運転撲滅条例規の施行規則案が公表され
 ました。
 現在、県民からの意見を募る「パブリックコメント」を実施中で、条例が
 全面施行される9月21日に合わせて施行になる予定です。

 ◎酒提供飲食店に指示書 飲酒運転撲滅条例規則案(6月13日 西日本新聞)

 飲酒運転で摘発された人に酒を提供した飲食店から1年以内に再び飲酒運転
 で摘発される客が出た場合、店はその旨を記した公安委の「指示書」を3ヵ月
 間掲示しなければなりません。「指示書」を掲示していない飲食店には5万円
 以下の過料が科されます。

 ◎飲酒運転5年で2回摘発、依存症の受診義務(7月6日 読売新聞)

 条例には、飲酒運転で「一定期間」に2回摘発された違反者にはアルコール
 依存症の受診を義務付けるとした規定があり、この期間を「5年」とすること
 が発表されました。従わない場合は5万円以下の過料が科せられます。


 5)酒類提供と同乗者への罰

 加西市で小学生の兄弟が飲酒運転の軽トラックにはねられ死亡した事故で、
 危険運転致死罪で起訴されている被告に酒を提供した飲食店経営者2人が、
 運転免許の取り消し処分を受けたことがわかりました。

 ◎酒提供で運転免許取り消し 加西・兄弟死亡事故 (6月15日 産経新聞)

 事故は昨年12月10日夜に発生。被告は飲食店2店で焼酎3杯と持参したワイン
 1杯を飲んだ後、軽トラックを運転し、皆既月食を観察するため外出していた
 兄弟2人をはねて死亡させました。
 兵庫県公安委員会は、飲食店経営者2人の行為が酒酔い運転のほう助にあたる
 と判断。道交法施行令に基づき、2人の運転免許取り消しに加え、免許を再
 取得できない「欠格期間」を3年とする行政処分を決めました。

 一方、長野では、酒気帯び運転による少女の死亡ひき逃げ事件の同乗者に対し、
 懲役1年10カ月執行猶予4年の判決がくだりました。

 ◎同乗者に猶予刑 酒気帯び運転死亡事件(7月6日 朝日新聞)

 道路交通法の酒気帯び運転同乗罪は、運転者の酒気帯び状態を知った上で、
 自身を運ぶように依頼することが要件。今回、被告からの言葉による明確な
 依頼はなかったため、「黙示の依頼」が成立するかどうかが争われました。
 
 判決は、被告が事件前から数回、一緒に飲酒した元少年の運転する車で送っ
 てもらっていたことを重視。事件当日も「口に出さずとも、送ってほしい
 意図を元少年も了解し、被告が助手席に乗り込むことで明確になった」と
 して「黙示の依頼」の成立を認定しました。
 そして、「酒気帯び運転は元少年の意思のみでなく、被告の働きかけも相ま
 ったもの」として、被告側の責任を認めたのです。

 *<改正のポイントと背景2>周辺者への罰則の新設
   ↓ ↓ ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_topicks.html#20070614


 6)自転車の酒酔い運転、取り締まりを強化

 道交法は「何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定。この
 車両には自転車も入ること、ご存知でしょうか。
 罰則適用は、アルコールの影響で正常運転ができない「酒酔い運転」に限られ、
 5年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられます。
 つまり、自転車の場合はアルコールの数値に関係なく、まっすぐ10m歩けな
 かったり、ふらついていたり、目が充血しているなどの状態から正常な運転
 ができないと判断され、酒酔い運転とみなされるのです。

 自転車事故を防止するため、埼玉県警が酒酔い運転の取り締まりを強化。

 ◎急増 自転車も飲んだら乗るな! 埼玉県警取り締まり強化、検挙数は8倍
 (7月7日 毎日新聞)

 県警によると、自転車の飲酒運転で交通切符(赤切符)を交付したのは6月
 までで16件。
 過去は年間で以下の検挙数なので、力の入れようがわかります。
  06年3人
  07年2人
  08年1人
  09年4人
  10年1人
  11年11人
  12年16人(6月まで)

 県警は「酒を飲んでの運転は自転車であっても重大な事故につながる」と
 警告しています。

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   4.山さんコラム No.72
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 ASK飲酒運転対策特別委員会委員長
 元・JRバス関東株式会社会長     山村陽一

 ◆千利休も江戸庶民も知っていた

 「節度ある適度な飲酒」はアルコール1単位(20グラム)。
 2単位を超えると多くの病気のリスクが高まる。
 3単位以上になると、各国の疫学的調査で明らかに死亡率が急上昇し、ガン、
 脳出血、肝臓疾患、睡眠時無呼吸症候群などの危険も高まるハイリスクな
 飲酒である。
 ……と山さんがいくら説いても、ほとんどの「のん兵衛」諸氏は納得しない。

 多くの会合では、まず生ビールで乾杯、次に日本酒、焼酎の飲み放題。
 たいてい4~5単位は飲む。
 酒好きで有名な知人は「ビールで乾杯、銚子を1本空けた頃は、サア飲むぞ
 という気分。そこで止めろは、蛇の生殺し。無理だよ」とのたまう。

 昔は違った。東京八重洲の居酒屋の名店は「日本酒正一合2本まで」が「売
 り」だった。
 今はなき浅草の名店「松風」へ赤い顔をして行けば、若い衆に「今日はもう
 おやめなさい」とたしなめられて、中へ入れてもくれなかった。
 御徒町のとんかつ屋の老舗では、酒類だけを再注文すると「うちは飲み屋で
 はありません」といわれたものだ。

 戦前から昭和30年代まで、晩酌はお銚子1本が相場。
 そもそも晩酌できるのは大家のご主人。
 門構えのお屋敷に住み、正月、祭りには、門前に、こもかぶりの樽酒を一本
 抜き、ひしゃくを添え、貧しい人へ振舞おうてえくらいの旦那だ。
 (安サラリーマンは、晩酌などできなかった)
 その大家のご主人でさえ、お銚子1本だ。
 何か、特別に良いことがあれば「今日は、○○だから、も1本つけるか」と
 いい訳をしたものだ。
 1本では物足りない、などといったら、酒にだらしのない人と軽蔑されるから。

 古くは、千利休に
 「1杯の酒は、人、酒を飲み、2杯は、酒、酒を飲み、3杯は、酒、人を飲む」
 という戒めの言葉がある。
 まさに1単位、2単位、3単位の話だ。

 古典落語「素人鰻」の神田川の金さん、断酒中だったのに開業祝だからと
 酒をすすめられる。
 湯呑み1杯は、「夢中ンになってやっちまいました」。
 2杯目「よいご酒でございますね。これならもう上々でござんす」と、飲み
 ながら、断酒の努力を語る。
 3杯目は、酒の上での失敗を語り、最後に「ぐうっと飲み、チュウと大きな
 音を一度続けてチュウチュウと音をさせて、じいっと湯呑みの中をみてから
 ……(クダをまきはじめる)」。
 そしてワザとこぼした畳の酒を口で吸い、さらに手酌で4杯目。
 そのあとは、お決まりの酒乱のありさま。まさに酒が人を飲む姿。桂文楽
 が名演した。

 現代医学が膨大な調査研究で行き着いた結論に、利休は400年以上前、すでに
 到達していた。江戸庶民も3単位以上の飲酒が酒乱への道と知っていた。

 1単位を標準にするのは、日本だけではない。
 ロンドンのパブ、1パイントは568ml。泡を除けば、ほぼ1単位。
 フランスで赤・白ワイン、小グラス1杯ずつ。1単位。
 アメリカのバーボンウイスキーダブルが60ml。1単位。
 世の東西を問わず、この量で一応飲んだ気分になり、毎日飲んでも、そう
 害にはならないと、何千年もかけて、酒飲みの先輩たちが、膨大な人体実
 験をして行き着いた。
 いわば1単位は、酒飲みのための「黄金の適量率」なのだ。

 では、何故、現代の「のん兵衛」は多量飲酒に走るのだろうか。
 日本の場合は、戦中・戦後の物不足。強いられた節約・禁欲からの解放と
 高度経済成長による増産・販売拡大が主要な原因。
 戦後、日本人にとって、食べ物、衣服、家具、家庭電気製品、あらゆるモノ
 を心の欲するままに買い、食べ、所有することが夢となった。酒類も例外
 でない。何千年にわたって到達した「適量」は無視され、忘れ去られた。
 心ゆくまで飲み、すっかり酔っ払い、前後不覚になる、これが「酒飲みの
 豊かさ・理想」と誤解したのだ。

 もちろん、酒類製造・販売会社の攻勢も大きい。
 酔っぱらって浮かれる歌謡曲「お酒飲むな、酒飲むな、のご意見んなれどー
 ヨイヨイ……」がラジオから流れた。
 映画やTVでも、おいしそうに飲む場面、大量に飲む場面、酔ってドンちゃ
 ん騒ぎをする多量飲酒の情景があふれた。そのうえTVはコマーシャルで
 飲酒をあおった。

 世界的大スター、三船敏郎が、大ジョッキをうまそうに傾ける「男は黙って
 サッポロビール」は、戦後最高のビール広告コピーではないか。
 ビールは、ああして飲むものと、すっかり刷り込まれた。ちびちび飲むもの
 ではない。豪快に咽喉に流し込み「のど越しの味を楽しむものだ」と思い
 込んだ。
 山さんが大学3年の時、ドイツ留学から帰国されたばかりの講師が
 「本場ドイツでは、1口ずつ、ゆっくり味わいながら飲んでいる。蓋つきの
 陶器のジョッキもある」
 と、性格学の講義の中で話された。
 だが、山さんは、三船敏郎の姿を思い浮かべ、本当かなと半信半疑で聴い
 ていた。
 (今では、飲酒運転防止インストラクターの研修の中で、ビールは本来、
 語り合いながら、ちびちび飲ものと教えている)

 コマーシャルなら業界トップの某社も負けていない。安もののウイスキー
 をさもうまそうに飲むアニメを登場させた。
 「○○○を飲んでハワイへ行こう」
 ああ、当時のハワイは憧れの夢の島。みんな一所懸命に飲んだ。

 アメリカでは禁酒法時代、一般の人々は禁酒を強いられた。金のある者は、
 ヨーロッパ、特にパリに出かけ底抜けに飲んだ。この情景はヘミングウエイ
 のベストセラー小説「陽はまた昇る」に活写されている。
 禁酒法がとけたとたん、文学者や限られた人々だけの、浴びるような酒の
 飲み方が、広く流行した。
 戦後のアメリカ人の食べっぷり飲みっぷりは常軌を逸している。現在、ア
 メリカのバーでカクテル、たとえばドライマティーニを頼めば大きなカク
 テルグラスが出てくる。日本の倍以上。確実に健康に悪影響が出る。

 先進国が、健康問題解決の鍵は「欲望のコントロール」であると、気がつい
 たのは最近のことだ。
 それまでは、不足、欠乏が不健康の原因と考えられてきた。まずカロリー
 不足。次に「たんぱく質が足りない」など特定の栄養不足。続いてビタミン
 不足、ミネラル不足。それからサプリメントの流行。
 しかし、現在は摂りすぎ防止の時代である。
 節酒は、いかにも今流に聞こえ、流行の尻馬に乗っているように見えるか
 もしれない。しかし、節酒・禁酒は、おそらく数千年の歴史を持つ偉大な
 人類の知恵である。
 酒飲みたるもの、この人類の遺産を正しく伝える使命がある。

 山さん、本日は湯呑に1杯。ぐっと飲む金さんと違って、舐めるがごとく
 すするがごとく、みちのくは、一関の銘酒を味わうつもり。青葉の季節、
 いいカツオがあればなお楽しいが……。さて。

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  5.ASKの活動ご紹介
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 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)は、
 アルコール問題の予防に取り組む任意団体として1983年に設立、
 2000年にNPO法人になりました。1994年には、出版・研修の事業部
 門が(株)アスク・ヒューマン・ケアとなり、活動と事業の両面から
 予防を推進しています。

 ASKでは、「飲酒運転を防止するためには、アルコール依存症の
 早期発見・介入を視野に入れた総合的な予防対策が欠かせない」との
 認識のもと、2005年に飲酒運転対策特別委員会を発足させました。
 山村陽一委員長と今成知美ASK代表のリーダーシップのもと、被害
 者遺族・専門家・関係機関と連携しつつ、予防と再発防止の両面から
 本格的な飲酒運転防止対策に取り組んでいます。

 これまでに行なってきた活動は……

 ・被害者遺族による厳罰化署名運動や、生命のメッセージ展に協力
 ・運行管理者用テキストに「一歩踏み込んだ飲酒運転防止対策」執筆
 ・アメリカで酒気帯び運転で検挙された日本人に対して米国裁判所指
  定の教育プログラムを実施
 ・日本損保協会の「飲酒運転防止マニュアル」に執筆協力
  日本損保協会主催のシンポジウムに協賛し、全国各地で講演
 ・バス会社から運転手向けの予防プログラム「セルフケアスクール」
  を委託され、プログラムを開発
 ・「飲酒運転防止<通信スクール>」のプログラム開発
 ・職場の飲酒運転対策メルマガの発行
 ・啓発パンフ「飲酒運転 あなたは大丈夫?」制作
 ・代表今成がアメリカ・カリフォルニア州の飲酒運転再犯防止対策の
  視察、内閣府主催シンポジウムで報告
 ・国土交通省主催のシンポジウムで、山村、今成が発表
 ・今成がオーストラリア・ニューサウスウェルズ州の対策を視察
 ・国の「常習飲酒運転対策推進会議」で今成が海外視察報告
 ・「飲酒運転 懲戒処分事例の分析07・4・10」をまとめる
 ・研修用DVD「知って得する!アルコールの基礎知識」製作
 ・〔飲酒運転防止インストラクター養成講座〕を開始
  日本損害保険協会の助成で3年間に1000人の養成を目指す
 ・「飲酒運転 運転代行の落とし穴06・9~08・4」をまとめる
 ・「教職員の飲酒運転 懲戒処分事例の分析07・10~08・9」をまとめる
 ・山村が警察庁主催シンポジウムで報告
 ・内閣府、常習飲酒運転者対策についてのヒアリングで今成が報告
 ・特設サイト「職場の飲酒運転対策チェック!」を製作
 ・DVD「知って得する!アルコールの基礎知識」冊子化
 ・厚生労働省シンポジウムで今成が報告
 ・トイレットペーパー「飲酒運転防止(7つの落とし穴)」を製作
 ・「警察職員による飲酒運転事例の分析07~11」をまとめる

 ↓詳しくは、ASKのホームページをご覧ください↓
 http://www.ask.or.jp/dontdrivedrunk.html

=====================編集後記 *つぶやき*========================

 運輸会社での研修で「自転車」の飲酒運転の話をすると、ドキッとされる方
 がけっこういます。
 ・飲んで帰って、駐輪場に置いた自転車に乗る
 ・休日に家で昼間飲んで、近所のレンタルビデオ店まで自転車で
 ・近所の友人宅で飲んで自宅まで自転車で

 落とし穴はいろいろありそう。
 冷えたビールがおいしい季節。気をつけましょう。
 
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 【職場の飲酒運転対策メルマガ】74号 12.7.10
                  
 発行 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
    飲酒運転対策特別委員会
  
       〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3-16-7-7F         
       Tel 03-3249-2551 Fax 03-3249-2553             
       URL http://www.ask.or.jp/ email ask-ddd★(★を@に変えてください)a-h-c.jp

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