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職場の飲酒運転対策メルマガ                    バックナンバー

ASKが無料配信している「職場の飲酒運転対策メルマガ」のバックナンバーです。

65号2011

★__________________________
 ☆ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     【職場の飲酒運転対策メルマガ】  
                  65号 11.10.18
                   ASK飲酒運転対策特別委員会
                   http://www.ask.or.jp/
    ___________________________☆
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄★

 飲酒運転防止への社会的意識の高まりを受けて、運輸業界をはじめ、
 さまざまな職場で、今、積極的な取組みが模索されています。
 このメルマガでは、ヒントになる事柄、役に立つ情報をお伝えして
 いきたいと思っています。

=================== このメールマガジンは ====================
 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)内に
 設置された飲酒運転対策特別委員会が、情報提供のために発行する
 ものです。
 ASKのホームページ http://www.ask.or.jp/ からご登録いただいた
 方に、月1回、無料で配信します。
===========================================================

━━━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    1.インストラクター養成講座NOW!
    2.ASKからのお知らせ
    3.NEKOのニュースCLIP!
    4.山さんコラム No.63
    5.ASKの活動ご紹介
    6.編集後記 *NEKOのつぶやき*

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  世間体を気にする前に
      飲酒運転になっていないかを気にしてほしい

==============================================================★
  1.インストラクター養成講座NOW!
===============================================================

 ★上級インストラクターが続々誕生!
  
 9月に行われた実技面接を経て、新たに10名の上級インストラクター
 が誕生し、総勢21名になりました。 
 あらゆる分野のプロフェッショナルが勢ぞろい。
 ホームページにすでに15人のプロフィールが掲載されています。
  ↓ ↓ ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_inst_jyoukyuu.html (順次更新していきます) 

 講演などの依頼は、それぞれに直接ご連絡ください。


 ★スクーリング、折り返し地点!
 スクーリングもいよいよ後半戦に突入です。
 受講者から、実践報告も届きはじめています。
 取材のご依頼はASKまでどうぞ。電話03-3249-2551

 10月19日 大宮
 10月26・27日 大阪
 11月2日 札幌
 11月8日 京都
 11月9日 高松
 11月16日 仙台
 11月24日 沖縄
 11月29日 広島
 12月1・2日 福岡
 12月14・15日 東京
 
 ★スクーリング受講者からはこんな声が!

 ・参加型で受講しやすい内容だった。(教習所)
 ・研修の進め方が、自分が実践するのにとても参考になりました。(運輸)
 ・ケーススタディの中で様々な業種の人の話を聞くことができてよかった。
  (トラック) 
 ・依存症の怖さを知ることができた。(バス)

 ★スキルアップ研修も好評開催中!

 10月18日 大宮
 10月25日 大阪
 11月1日 札幌
 11月15日 仙台
 11月25日 沖縄
 11月30日 福岡
 12月13日 東京
 
 ★スキルアップ研修受講者の声です!

 ・「アルコール検知に引っかからなければよい」という指導ではなく、
  節度ある飲酒の指導に努めるよう指導することがインストラクターの
  最大の目的であることをしっかり認識できた。(バス) 
 ・社員のメンタルケアや健康管理との組み合わせがあると、アルコール
  教育はより効果的だと考えています。このような計画を、具体的に
  イメージ化することができました。(一般企業)
 ・他の業種の方の現状がよくわかったし、検知器の会社の方の意見も
  聞くことができて、とても参考になりました。(教習所)
 
 インストラクターに認定されている方で、スキルアップ研修に参加を
 ご希望の方は、ASK(03-3249-2551)までお問い合わせください。

==============================================================★
  2.ASKからのお知らせ
=============================================================== 
 
 ★内閣府主催「交通安全フォーラム」で山村委員長が講演します。

 11月10日に熊本で行われる「交通安全フォーラム」で、飲酒運転防止
 インストラクター養成講座の講師でもある、山さんこと、山村陽一が
 講演をします。
 お近くの方は、ぜひご参加ください!
 
 テーマ:「飲酒運転の根絶を目指して」
       -運転は 飲んだらせんごつ させんごつ-

 日時:11月10日(木)13:00~16:30
 場所:ホテル熊本テルサ テルサホール(熊本市水前寺公園28-51)
 

 ★飲酒運転防止トイレットペーパーを地域の交通安全運動に活用!
 
 沖縄からトイレットペーパーのご注文があったので、活用方法を
 お聞きしてみました。

 ――宮古島市・ロータス東和オートの新城さんのお話

 今回はトイレットペーパーを、社内だけでなく、取引先の事業者にも
 配布しました。すると、「面白いね、アイデア商品だね」という声が
 あがり、飲酒運転防止のきっかけ作りに役立っています。 

 新城さんは、沖縄県公安委員会から地域交通安全活動推進委員の委嘱を
 受け、交通安全活動をされているとのこと。
 日ごろからASKのHPやメールマガジンを購読、飲酒運転防止に尽力
 されています。

 ★一味違う飲酒運転防止活動を! 
 トイレットペーパー「飲酒運転防止(7つの落とし穴)」
  ↓   ↓   ↓
 http://goo.gl/LhpCS
 
 ★社内教育や研修にはこちらを!

 ●DVD&ハンドブック
 「知って得する!アルコールの基礎知識」
 http://www.ask.or.jp/ddd_dvd.html#book
 ●体質ごとの飲酒リスクがわかる!
 ASKアルコール体質判定セット「かんたんジェルパッチ」
 http://www.a-h-c.jp/tool_taihan.html

==============================================================★
  3.NEKOのニュースCLIP!
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 ついこの間までの暑さが嘘のような、過ごしやすい日が続いています。
 あっという間に日も短くなり、夜が長く感じられるようになりました。
 運動の秋、食欲の秋、読書の秋。
 でも今年は、放射能の影響もあり、手放しで実りの秋を喜ぶことが
 できない切なさを感じます。
 
 震災以降、家で過ごす時間が増えた人が多いそうです。
 せっかくの秋の夜長。
 お酒を控えて、読書の秋を思い切り満喫してみてはいかがでしょうか。

 さて、今号の内容はこちらです。
 お時間の許すかぎり、おつきあいください。

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 1)世間体が悪くかなわんって……
 2)依存症を疑ってください
 3)議員が息子を身代わりに
 4)ボランティアの帰路に
 5)警察官と飲酒運転
 6)「生命(いのち)のメッセージ展」開催100回

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 1)世間体が悪くかなわんって……
 
 代行運転を利用しても、これじゃあ意味なしです。
  
 ◎「代行」後に飲酒運転 市立中の女性教諭、容疑で逮捕 舞鶴/京都
 (10月9日 毎日新聞)

 10月7日午後11時15分ごろ、中学女性教諭(32)が、市道で軽乗用車を
 運転、呼気0.15mg/l以上が検出されました。
 女性教諭は、同僚の女性教諭宅にマイカーで行き、飲酒後、代行運転で
 帰宅。しかし、約5kmはなれたスーパー駐車場で、代行の車を降りると、
 自分で運転してしまいました。
 その様子を偶然覆面パトカーが目撃し、追跡して逮捕。
 女性教諭は代行から乗り換えた理由を、「代行で家の前まで来てもらう
 のは(世間体が悪く)、かなわんかった」と供述しています。

 代行運転で帰るのが「世間体」が悪い?
 深夜まで飲んでいたのを周りに知られるのが嫌、ということでしょうか?

 しかし、その結果、飲酒運転でつかまって、もっと世間体が悪いこと
 になってしまったのです。


 〈飲酒運転〉運転代行の落とし穴
  ↓  ↓  ↓ 
 http://www.ask.or.jp/ddd_case2.html

 2)依存症を疑ってください

 教諭の飲酒運転が続きます。 
 福岡県の中学校男性教諭(41)が、飲酒運転で停職6ヵ月の懲戒処分を
 受けました。
 
 ◎酒気帯び運転で停職6ヵ月 福岡県教委が中学教諭を処分
 (10月7日 朝日新聞)

 実はこの教諭、過去にも飲酒運転事故を起こしていました。

 ・1995年 帰宅途中に酒気帯び運転で検挙。
 ・1998年 酒気帯び運転で追突事故。4人に2週間の怪我をおわせた。
      (道路交通法違反で25万円の罰金)

 そして、今年8月5日。
 教員仲間と一緒にビールをコップ10杯、焼酎を4、5杯飲んで電車で帰宅。
 翌6日朝、部活動の指導で中学校へ行くため、時速100kmで走行したのです。
 パトカーに静止され、呼気0.2mg/lのアルコールが検出。30万円の罰金と
 90日の免停処分を受けました。

 「飲酒から約9時間たっていたため酒は残っていないと思った」

 たしかに、アルコールの分解時間(ビール500mlにおよそ4時間)を知ら
 なかったということもあるでしょう。でも、それだけではない……。
 注目すべきは、何度も痛い目を見ているにもかかわらず、飲酒行動が
 改まっていない事実です。

 依存症を疑う必要があります。
 罰するだけでなく、飲酒運転の背景への介入が大切なのです。

 
 ★ASKアルコール通信講座<基礎クラス>
  アルコール依存症についての正しい知識と対応法を学ぶ!
   ↓  ↓  ↓
  http://goo.gl/MX1pX

 3)議員が息子を身代わりに

 自分の保身のために、息子に身代わりをさせるとは……
 
 ◎神戸町議、飲酒し衝突事故=長男に身代わり依頼―県警捜査、辞任へ
 (9月21日 時事通信)
 
 9月2日午後10時20分ごろ、神戸市の町議(57)が町内で車を運転中、
 道路わきの石碑に衝突する物損事故を起こしました。
 連絡を受けて現場に駆けつけた長男に身代わりを依頼。
 長男は、自分が事故を起こしたと虚偽申告をしました。
 町議は身代わり申告をさせたことについて、こう説明しています。
 「衝突した反動でクラクションが鳴り、住人が集まってきた。動揺し、
 怖くなって、息子に代わってくれと頼んだ」
 飲酒運転に関しては、「運転する4時間半前に缶酎ハイを1本飲んだが、
 飲んだことをまるっきり忘れてしまっていた」と弁解。
 結局、町議は辞職願いを提出、辞任しました。
 
 自分の不始末のために、息子まで犯罪者にしてしまった父。
 酔い(アルコールによる脳のマヒ)のなせる業でしょうか。
 父の頼みを断われなかった息子は今、何を思っているのでしょう。


 4)ボランティアの帰路に

 津地方法務局は9月30日、速度超過と飲酒運転で検挙された登記専門職
 の30歳代の男性職員を停職1ヵ月の懲戒処分にしました。

 ◎ボランティアの帰路に 津地方法務局職員を懲戒処分/三重
 (10月1日 毎日新聞)

 このいきさつが、なんとも……。

 男性職員は6月14日夜、長野県松本市内の中央自動車道で、38キロの
 速度超過と酒気帯び運転で検挙されました。
 年休を取り、東日本大震災で被災した福島、茨城県内でボランティア
 活動をした帰り道でした。

 支援物資提供先の人から礼として勧められ、コップに2~3杯の焼酎を
 飲んだといいます。
 「断わり切れなかった。4時間ほど車内で仮眠したので酒は抜けたと
 思った」

 ボランティアという善意に感謝を表わすために、被災者が勧めた焼酎。
 その気持ちを無にできず、断われなかった男性。
 両方の善意があだになってしまいました。

 焼酎ではなく、言葉で感謝を伝えていればよかったのに。
 「車なので」と断わり、「お気持ちいただきます」とひとこと添えれば
 それで済んだのに……。
 後悔先に立たずです。

 
 5)警察官と飲酒運転

 10月16日、酒気帯び運転で逮捕された女性の車に、新潟県警見附署副
 署長(56)が同乗していたことがわかりました。

 ◎酒気帯び運転の車に同乗=新潟県警の副署長(10月16日 朝日新聞)

 県警によると、交通機動隊が午前1時55分頃、ふらついた運転をしている
 車を発見し、運転していた女性スナック経営者(48)を現行犯逮捕。
 その際、副署長は後部座席にいたといいます。

 副署長は前夜、署員約10人とともに親睦会を開いて飲酒。その後も酒を
 飲み、単独で行動。車内に、ほかに同乗者はいませんでした。
 「飲酒運転の撲滅に取り組んでいる中、警察幹部が同乗していたのは
 誠に遺憾。事実関係を捜査・調査中で、結果に基づき、厳正に対処する」
 と、県警は言っています。

 ニュースをさかのぼってみました。
 飲酒運転でつかまっている警察関係者はこんなにいます。

 ●茨城県警・30代男性警部補(10月2日)
 花火競技大会で友人数人と飲酒後、帰宅しようと車を運転。パトロール中
 の警察官に呼び止められ、基準を超えるアルコールが検出。
  
 ●愛媛県警・元警察署長の自動車教習所長64歳(8月29日)
 スーパー駐車場で乗用車に接触。事故を届けた際、署員が酒の臭いに気
 づく。前夜午後11時頃まで自宅で焼酎のロックなど4、5杯を飲み、「酒
 が残っているとは思わなかった」。

 ●千葉県警・会計課長54歳(7月15日)
 酒気帯び運転で事故を起こし相手にけがをさせたとして逮捕。飲食店で
 友人と瓶ビール1本、冷酒5合を飲み、車で帰宅しようと走行中に大型
 トラックと接触。2台は道路脇に停車したが、課長がギアを入れ間違え
 てバック、後方に停車したトラックに衝突し運転手にけがをさせた。

 ●富山県警・男性巡査部長38歳(7月3日)
 自宅で飲酒後に車を運転し、電柱と倉庫に衝突する物損事故を起こした。
 呼気検査で検出されたアルコールは酒気帯び運転の基準値未満だった。
 午後3時ごろから自宅で焼酎の水割りを3杯飲み、午後4時ごろに睡眠薬を
 服用、約1時間半の睡眠をとった後、買い物に行くため運転。
 「量が少なく、大丈夫だと思った」

 ●福島県警・警部57歳(6月17日)
 非番の昼に、官舎で焼酎の水割りを2~3杯飲んで就寝。午後4時半ごろに
 自家用車で外出、公園でさらに焼酎2杯を飲んだ後、再び車を運転し、標識
 の支柱に衝突。
 警部は福島第1原発事故後、警戒区域の20キロ圏内で一時、行方不明者
 の捜索に当たったが、その後通常勤務に戻った。
 「休日の解放感に加え、精神的な疲れを癒やすために飲んだ」
 
 ●静岡県警・鑑識課係長41歳(6月8日)
 右折のために停車中だった車に追突。「自宅で酒を飲んだ。家族を迎えに
 行くために、運転してしまった」
 病気療養のため、昨年10月から今年2月まで特別休暇。復帰した2月以降も
 休みがちで、5月から再び休暇に入っていた。「うつ病から逃れるために
 酒を飲んだ」とも供述しているという。

 ●広島県警・刑事課長49歳(5月15日)
 公園で署員や元警官らと開いた懇親会でバーベキューを食べながら飲酒。
 「ちょっと乗せてみいや」と部下の車に乗り、園内や林道を約1キロ運転。
 缶ビール2本と日本酒1.5合程度を飲んだが、「飲んで2時間たっており、
 酔いはさめて大丈夫だと思った」。
 巡査部長(40)は、飲酒運転と知っていながら警部が運転する車の助手席
 に同乗し、制止しなかった。

 警察は職員に対して、モラルだけでなく、アルコールの分解時間や作用
 などの基礎知識を持たせ、飲酒習慣の見直しを促してほしい。


 ★DVD&ハンドブック
 「知って得する!アルコールの基礎知識」
   ↓  ↓  ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_dvd.html#book

 6)「生命(いのち)のメッセージ展」開催100回
 
 悪質な交通事故、いじめ、犯罪、イッキ飲ませ……。
 さまざまな理由で理不尽に命を奪われた人たちの思いを、等身大のパネル
 と靴、メッセージで伝える100回目の「生命のメッセージ展」が10月3日
 から10月7日まで東京・虎ノ門で行われました。
 
 ◎遺品で伝える思い 生命のメッセージ展100回(10月3日 産経新聞)
 
 展示を考案したのは、NPO法人「いのちのミュージアム」代表で、
 造形アーティストの鈴木共子さん。
 2000年に、大学の入学を終えて間もない19歳の息子の命を、飲酒・無免許
 で100キロを超えるスピードの暴走車に奪われました。
 
 刑の軽さに疑問を感じ、 同じ思いを抱く仲間たちと共に2年間街頭に立
 ち、約37万人の署名を集め、刑法改正に動きます。
 そして「危険運転致死傷罪」の新設にいたりました。 

 今年は、東日本大震災で犠牲になった人たちへの追悼の気持ちを込め、
 被災地で撮影された写真も紹介されています。

 生命のメッセージ展(公式サイト)
  ↓  ↓  ↓
 http://www.inochi-message.com/info
 鈴木さんはASKのサイトにも、手記を寄せて下さっています。
  ↓  ↓  ↓
 http://www.ask.or.jp/ddd_suzuki.html 

=============================================================★
   4.山さんコラム No.63
==============================================================

 ASK飲酒運転対策特別委員会委員長
 元・JRバス関東株式会社会長     山村陽一


 ◆500円玉の悟り

 ズボンのポケットから取り出した硬貨を見て、ハッとした。500円玉だ。
 10円とばかり思っていたが、500円玉とは。思わずポケットへ戻した。
 お賽銭は、いつも10円か5円。お正月は、きばって100円と決めている。
 小銭がなければ省く。
 神様が賽銭の多少で「願い」を差別したら、お賽銭は賄賂と同じ。神
 様が、そんな悪さをするはずがない。お賽銭は金への執着を断つため
 に投げ入れるもの。額の多少は問題ではない。
 これが山さんの賽銭哲学。
 「伊勢神宮では元来『幣帛もささげず』と金品奉納は行なっていなか
 った」(夢窓疎石「夢中問答」)の記述に感銘を受けて以来のことだ。
 ……でも何か落ち着かない。

 「一度入れようとしたのに戻すのは金に執着している証拠だ。思い切
 って入れようか」
 「500円は高額すぎる。今まで入れたことはない。惜しいのではなく例
 外を作りたくない」
 葛藤は高まる。
 「額にこだわるのは欲ばりだ。入れよう」
 「今までの慣例を破りたくない」
 金への執着は断ちたいが、惜しい気持も強い。
 葛藤が最高に高まった瞬間、えい、ままよと500円玉を投げ入れた。
 「コトン」床に落ちた音が耳に入った瞬間、急に心が軽くなった。
 入れたあと後悔すると思っていたのに、まったく違う。実に爽やかで
 清々しい気分。あれほど迷っていたのに、妄念はゼロ。金への執着心、
 後悔などどこにもない。

 小さな神社の境内が、とてもきれいだ。石段は傾き、欠けている部分
 はあるが、掃除が行き届き、草も丁寧に抜かれている。鳥居の下の石
 段はコンクリートできちんと補修され、階段脇も山百合だけ残し草が
 刈られている。
 これだけきちんと整備するには、里人が数人ずつ輪番で作業している
 に違いない。
 旅人である山さんが気持ちよくお参りできるのは、そのおかげと気が
 ついた。
 もし自分がこの山里に住んでいたら、当番日には清掃作業をするか、
 用事で参加できなければ日当代を負担することになる。とても500円で
 はすまない。
 10円のお賽銭を出していた時は、神社を維持している人々のことはま
 ったく考えていなかった。
 きれいに清掃されているとか立派なお社だとか考えたことはあったが、
 そのためにどれだけの努力がなされているか考え及ばなかった。

 執着心がなくなった瞬間の気持ちの良さは何なのか。
 葛藤が解けた瞬間の快感。それも欲望を断ったことによる快感。後か
 ら悔やむのではないかと恐れていた気持ちを乗り越えた快感。つまり、
 我欲のこだわりを捨てた快感だ。

 これに似た心の動きは、何回か経験がある。
 禅寺で7日間修業中、途中で帰るかどうか迷い、最後まで足の痛みと
 付き合おうと決意した直後の開放感。共感性訓練の場での気づき。仕
 事上の危機を抜け出た後の感慨。
 どの場合もアレかコレかの葛藤状態にある中で、とらわれていた心を
 捨て、新たな第一歩を踏み出したときに感じる。サッと新しい風景
 (世界)が見える。
 葛藤が高まったとき、目の前は真っ暗になる。これではいけないと新
 天地へ一歩を踏み出したいと思うのだが、踏み出せば絶対に悔やむと
 のこだわった考えが浮かび、それにしがみつく。ニッチもサッチもい
 かない。
 で、思い切って新たな方向へ踏み出す。するとその瞬間、目の前がパ
 ット明るく広がり、心が軽く、さわやかな感じになる。同時に、風景
 が鮮やかに見え、人の気持ちや行動がよく見える。
 素晴らしい不思議な感覚。

 しかし、この感覚は、再現が難しい。神社で再び500円玉を出しても、
 千円に増額しても、同じ心的体験は得られない。真の葛藤がないから
 だ。
 あれかこれかの真の葛藤状態に落ち込んで、それからエイッと抜け出
 るから、心的転換の境地が得られるのだ。

 山さんは、かつて断酒を実行した際にも一種の爽快さを体験した。当 
 時は本気で一生酒をやめようと決意した。
 その直後から、周囲は、苦しくないか、無理すればストレスがたまる
 ぞ、と揶揄か同情かわからぬ言葉をかけてきた。山さん自身も、それ
 まで1ヵ月禁酒の経験はあったが、断酒は、かなり難しいだろうと思
 った。そして世間を騒がせた大事件(JRバス関東の飲酒運転)の責
 任者だから、苦しくても、ストレスが溜まっても断酒を継続しようと
 相当の覚悟をした。
 だが、実際は、少しも苦しくなく、ストレスもたまらず、実に気分爽
 快。気持ちよく生活が送れた。日々、決意したことを実践・完遂した
 喜びがあった。葛藤からの脱出でなく、自己コントロールの満足感。
 あるいは安きにつきたい気持を抑える喜びとでもいうべきか。

 酒への執着心があり、一方ではやめたい気持ちがある人は、是非、思
 い切って自ら禁酒を宣言し、行動に移してほしい。禁酒は、苦しくも
 ない。ストレスも感じない。同じ風景だが、明るく広がるように一変
 して見える。新しい世界を見るような体験をするはず。そして、この
 体験を大切に思い返して行けば、禁酒継続が可能だろう。

 ただし、新しい風景を見るような鮮烈で爽やかな心理状態は、一度き
 りのものだ。
 日々の継続による満足感はあっても、それは酒の酔いが与える情動的
 快感ほどの強さではない。
 継続が難しいのは、こういう理由ではないのか。
 だから禁酒や節酒を始めたら、その分あいた時間に、昔やった趣味や
 スポーツを復活したり、ジョギングやウォーキングを始めたりして、
 快感をプラスしたい。

 飲酒運転処分の厳しさから、いやいや節酒を始めた多量飲酒者もいる
 だろう。
 健康診断で注意信号が出たりアルコール検知器にひっかかって、日頃
 の飲酒を反省しかけている人もいるだろう。
 飲酒運転防止インストラクターは、多量飲酒者のこの心の動きを捉え、
 禁酒や節酒の具体的実践法を教え、背中を押してほしい。
 もしうまく支援できれば飲酒運転防止インストラクター冥利につきる
 だろう。

 (なお、依存症が進行した人にとっては、断酒を始めることは一人で
 は困難な作業で、専門治療の助けを借りるのが望ましい)


=============================================================★
  5.ASKの活動ご紹介
==============================================================

 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)は、
 アルコール問題の予防に取り組む任意団体として1983年に設立、
 2000年にNPO法人になりました。1994年には、出版・研修の事業部
 門が(株)アスク・ヒューマン・ケアとなり、活動と事業の両面から
 予防を推進しています。

 ASKでは、「飲酒運転を防止するためには、アルコール依存症の
 早期発見・介入を視野に入れた総合的な予防対策が欠かせない」との
 認識のもと、2005年に飲酒運転対策特別委員会を発足させました。
 山村陽一委員長と今成知美ASK代表のリーダーシップのもと、被害
 者遺族・専門家・関係機関と連携しつつ、予防と再発防止の両面から
 本格的な飲酒運転防止対策に取り組んでいます。

 これまでに行なってきた活動は……

 ・被害者遺族による厳罰化署名運動や、生命のメッセージ展に協力
 ・運行管理者用テキストに「一歩踏み込んだ飲酒運転防止対策」執筆
 ・アメリカで酒気帯び運転で検挙された日本人に対して米国裁判所指
  定の教育プログラムを実施
 ・日本損保協会の「飲酒運転防止マニュアル」に執筆協力
  日本損保協会主催のシンポジウムに協賛し、全国各地で講演
 ・バス会社から運転手向けの予防プログラム「セルフケアスクール」
  を委託され、プログラムを開発
 ・「飲酒運転防止<通信スクール>」のプログラム開発
 ・職場の飲酒運転対策メルマガの発行
 ・啓発パンフ「飲酒運転 あなたは大丈夫?」制作
 ・代表今成がアメリカ・カリフォルニア州の飲酒運転再犯防止対策の
  視察、内閣府主催シンポジウムで報告
 ・国土交通省主催のシンポジウムで、山村、今成が発表
 ・今成がオーストラリア・ニューサウスウェルズ州の対策を視察
 ・国の「常習飲酒運転対策推進会議」で今成が海外視察報告
 ・「飲酒運転 懲戒処分事例の分析07・4・10」をまとめる
 ・研修用DVD「知って得する!アルコールの基礎知識」製作
 ・〔飲酒運転防止インストラクター養成講座〕を開始
  日本損害保険協会の助成で3年間に1000人の養成を目指す
 ・「飲酒運転 運転代行の落とし穴06・9~08・4」をまとめる
 ・「教職員の飲酒運転 懲戒処分事例の分析07・10~08・9」をまとめる
 ・山村が警察庁主催シンポジウムで報告
 ・内閣府、常習飲酒運転者対策についてのヒアリングで今成が報告
 ・特設サイト「職場の飲酒運転対策チェック!」を製作
 ・DVD「知って得する!アルコールの基礎知識」冊子化
 ・厚生労働省シンポジウムで今成が報告
 ・トイレットペーパー「飲酒運転防止(7つの落とし穴)」を製作

 ↓詳しくは、ASKのホームページをご覧ください↓
 http://www.ask.or.jp/dontdrivedrunk.html

==============編集後記 *NEKOのつぶやき*===================

 長編小説を読み始めたら、すっかりはまってしまい、電車を乗り過ご
 すこと数知れず……。
 寝る間を惜しんでの読書。秋の夜長を満喫中です。
 
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

 【職場の飲酒運転対策メルマガ】65号 11.10.18
                  
 発行 特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
    飲酒運転対策特別委員会
  
       〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3-16-7-7F         
       Tel 03-3249-2551 Fax 03-3249-2553             
       URL http://www.ask.or.jp/ email ask-ddd★(★を@に変えてください)a-h-c.jp

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